病院機能を適切なインディケーター(指標)を用いて分析し、その改善を促すことにより医療サービスの質の向上を図ることを目的に、東京都病院協会は各病院の自発的参加(現在19病院)のもと平成14年4月より「診療アウトカム事業」を実施、一部を本ホームページ上で公開してまいりましたが、平成18年3月31日を持ちまして、東京都病院協会の診療アウトカム評価事業は終了いたしました。
18年4月1日よりは(社)全日本病院協会で引き続き本事業を継続していくことになりましたので、本事業への参加のお問合わせは(社)全日本病院協会までお問い合わせ下さい。
長い間ご協力いただきありがとうございました。
診療アウトカム評価事業への新規申込は(社)全日本病院協会 事務局までお願いいたします。
TEL : 03-3234-5165 FAX : 03-3237-9366
世界的に医療の質についての関心が高まってきています。2001年に米国Institute Of MedicineはレポートCrossing the Quality Chasmを公表し、受けることのできる医療サービスと実際に受けている医療サービスの内容に差異があり、これはchasm(断層)と表現されるほど深刻であること、今後、疾病構造が慢性疾患中心となり、複数の医療機関が治療に関与するにつれこのchasmは拡大することが危惧されること、これを解消するためにはInformation Technologyの大々的な導入と、医療提供体制の大幅な変革を必要とすることを指摘しました。
医療サービスの質を評価しようとする試みは1910年代まで遡ることが出来ます。最初は主に医療の結果に着目したものでした。1960年代には、A. Donabedianにより医療は、構造(ストラクチャー)、過程(プロセス)、結果(アウトカム)の3つの視点から評価すべきであるとの提案がなされ、これは現在も用いられています。ここで、構造とは、病院設備、保険制度、医療機器、専門医の確保など医療サービス提供前から定められているもの、過程とは提供される内容、結果とは提供されて生じる治療結果を表します。
先進国では構造についてはほぼ満たされていますので、医療サービスの質を向上させようとする活動は、主としてプロセス(過程)アプローチとアウトカム(結果)アプローチに大別されます。プロセスアプローチは一定の方法論に基づいて最適な治療方法を提示・提供するものであり、医療従事者にとっては何をすべきかが分かりやすい反面、最適な方法(治療)は必ずしも最良の結果をもたらさないという構造的な問題を有します。アウトカムアプローチは、方法の如何は問題にせず、患者データベースなどにより治療結果を提示しその保障を図ろうとするものです。しかしながら、アウトカムを示されるのみでは、アウトカムの劣った医療機関ではどのような方法(プロセス)を実行すればアウトカムの改善が得られるかが不明である、という問題を有します。表1に両者の特徴を示しますが、両者は並行して進められる必要があります。
特徴 | 最適な治療方法を提示する | 治療の結果をクリニカルインディケータを用いて提示する |
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欠点 | 最適な治療方法は必ずしも最良の結果を保証しない | 結果が悪くても改善策を提示できない |
例 | EBM、クリニカルパス | アウトカム評価事業(ベンチマーク) |
表1:プロセスアプローチとアウトカムアプローチの比較
1980年代後半にはEBM(Evidence Based Medicine)の方法論が確立し、多くの診療ガイドライン、及びこれを各病院の状況に併せて二次元で展開したクリニカルパスが作成され臨床現場に用いられました。日本でも各学会の努力により、診療ガイドラインの整備が図られ、またクリニカルパスを導入する病院が増えてきています。1990年代後半以降は、プロセスアプローチの限界が認識されるにつれてアウトカムアプローチを可能にするためのデータベース構築に諸外国の関心は移りつつあります。
データベースを用いたアウトカム評価事業の外観を図1に示します。基本的にはクリニカルインディケーター(臨床指標)を設定して、多数の病院の参加によりデータを収集し、集計して病院へ還元します。これにより、
などの効果が期待されます。個々の病院の努力では見えて来ない診療の標準が多数の病院の参加により明らかにされ、全体として医療の質向上が図られます。このような試みは、米国、豪州などで既に行われています。代表的な事例を表2に示します。
参加病院数 | 約2000 | 22 | 約600 | 約20 |
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参加形態 | 全米各州、国単位にスポンサー(州病院協会)を設定。病院はスポンサーを介して参加する形をとる。米国以外では、政府、大学などがスポンサーとなり参加する(ただし、比較を可能にするために1か国からの参加は5病院以上が必要) | ハワイ州の全病院。病院の自由意思による参加の形態を取っているが、発足時より全病院が参加しており、参加継続に対する圧力は比較的強い。 | 4年間有効の認定を受けた病院は、自動的にACHSの会員となりアウトカム評価、およびコンサルティングのサービスを受けることができる。 | 東京都病院協会への申し込み(東京都内病院は会員に、東京都以外の病院は賛助会員になる必要がある) |
参加費用 | あり(スポンサーはMHAの料金に上乗せして料金を参加病院に請求できる) | あり | あり(参加料金、コンサルティング料金は認定費用に含まれている。) | なし |
参加病院への情報提供 | 当該病院及び他病院については集積データ | 参加全病院の個別データ | 当該病院及び他病院については集積データ | 当該病院及び他病院については集積データ |
集積データの公表(統計数値) | 行っていない | 行っている | 行っている | 行なう予定 |
認定業務 | 認定はJCAHOが実施(関係なし) | 認定はJCAHOが実施(関係なし) | 認定機関を兼ねる | 認定は日本医療機能評価機構が実施(関係なし) |
組織形態 | MHAが所有する株式会社が行う | Non-profit organization | Non-profit organization | Non-profit organization |
表2:米国、豪、日本での代表的なアウトカム評価事業
東京都病院協会では、病院機能を適切なインディケーター(指標)を用いて評価し、その改善を促すことにより医療サービスの質の向上を図ることを目的に、病院機能アウトカム評価事業を実施いたしました。本事業は各病院が患者及び病院全体の診療内容に関するデータを集めて協会に送付し、協会は全体の結果や個別の状況を定期的にフィードバックするもので、医療サービスの質向上、効率的な病院経営のためには必須の取組みです。
病院の自発的参加により、第三者機関(東京都病院協会)に対して継続的にデータを送付する。第三者機関では多数施設のデータを集約し、解析後、参加病院に全体のパーフォーマンスと当該病院のパーフォーマンスを明示して、データの還元を行い、参加病院に医療サービスの質改善へのインセンティブをもたらす。
(1)主要24疾患・処置の患者個票、(2)病院全体の診療内容に関わるデータ(院内感染症、デバイス使用、抑制、転倒・転落など)。
提供されたデータは集計され、年に4回、全体の統計指標とともに当該病院の位置付けがあきらかにされた形で参加病院に還元されます。集計されたデータは統計的に現在の医療水準を示すものとして、第三者機関の判断により一般に公表されることがありますが、その場合、個々の病院名がわからないように処理・公表されます。
各参加病院より四半期ごとに提出される、主要24疾患による入院患者の診療録の主な内容および病院全体の診療内容に関わるデータ(入院後発症感染症、抑制、転倒・転落)を基に分析を行います。
各参加病院は専用のソフトを使用してデータの入力・収集を行います。
トップ画面
診療録情報の入力画面